だって世の中だもの

セーラームーンの感想のみ

#90 地球崩壊の予感?謎の新戦士出現

3年の春。世界征服に必要な聖杯を手に入れるための三つのタリスマンはピュアな心の持ち主が持つという。化学者の放つ怪物にレイが襲われ、謎の戦士が現れる。絵も音も演出も、今までと何もかも違う。だけどやっぱりセーラームーン。トラウマ的神回です。

(1)DVD 2022年11月
(2)MX 2024年10月2日

  • 1回目に見た時点では、1〜30、67〜89話しか見てませんでした。つまり無印のクライマックスとか魔界樹編の花見回を見てません。なのでインパクトがすごい。観終わってしばらく椅子を立てませんでした。第25話以来2度目です。
  • 全話順番に見てきた人とか劇場版を見た人だと、「変身が解かれる」とかは見たことがあるわけなんですが、自分はそれらよりこっちを先に見たもので、鮮烈。
  • 1回目の衝撃もすごかったんですが、MXで放送されたので見た2回目のほうがつらかった。これから何が起きるか知ってるんだもん。始まる直前には胸が高鳴り手が震え、歯が鳴ってました。そのくらい面白いんです。
  • 今までにないハードな展開や演出の連続。きっとマンネリ打破がテーマなのかもしれません。どこらへんそう感じたのか、とにかく一つずつ、通ぶったイタい感じ丸出しで見ていきます。

  • 今までとノリの違うレイちゃんの夢。人々も戦士たちも粉々になっていく。これを繰り返し映す。しつこいと思わせるほど繰り返し、さらに繰り返します。
  • サブタイトル、「地球崩壊」という言葉。今までは地球の支配をめぐる戦いでした(デスファントムは違ってましたけど)。崩壊などとは悪魔もやらぬ。そんな言葉がセーラームーンに出てくるとは。
  • これまでのファンタジー、オカルト風のアンチテーゼのような化学的な施設。今までの世界観の常識が通じない印象を与えます。
  • 聖杯を手に入れるため、化学者は三つのタリスマンを求めている。これが今まで描かれた月と地球、過去や未来と一見無関係。これもまたこれまでの世界観との断絶を感じます。
  • 研究室のシーンでの新曲。化学者が語るときの曲が重い。サックスやタンバリンだった今までと全く異質なストリングスとブラス。Rにもストリングスの名曲がいくつもありますが、それとも違う。胸に刺さって涙が出てくる。戦慄さえ覚えます。やっぱり作曲の人が天才です。
  • 布石になるレイうさタイム。ケンカばっかりじゃないところも。二人がどういう関係なのかをモノローグでしゃべらせてしまいます。
  • 木に宿るダイモーンの卵。絵もBGMもSEもセーラームーンとは思えません。なにが始まるのか、強烈な不安が募ります。ダイモーンという名前の響きも異質。
  • 夢の意味を知ろうと久しぶりに九字を切るレイ。今までとのつながりを持たせつつ、それで簡単には解決しないというのが伝わります。
  • ダイモーン・ミクージ。ただ事ではない新BGM。今までの「東京に巻き起こる怪事件」みたいなオシャレな感じがまったくない、危機だけの曲。
  • それはそうとまた従来のドロイドと代わり映えしないギャグっぽい……と思わせておいて、当番組初、変身阻止。新シリーズ初っ端の約束壊しです。
  • ラクタービームで苦しむレイ。セーラー戦士が直接のターゲットになるのも初めてだし、マーズではなくレイがこんなに悶絶するのは聞いたことがないし、開いた胸元、乱れた着衣が、見ていて痛い。今までこの番組で、こんなに苦しそうで痛そうなのはなかったと思います。
  • いつものことのようにちゃんと名乗りから入るセーラームーン。ミクージに振り回されて、スカートを抑える。まだ気楽な感じがまた不安になります。
  • 3人が遅れてきて、ちょっと安心させておいて、やっぱり変身阻止。ミクージが強い。「大凶です!」とか、今まで同様のふざけたノリなのに戦士たちが何もできない。それが怖い。
  • タキシード仮面はいつも通りにしておいて、ああ、ここでとりあえず一段落かと。セーラームーンの決め技は今までと同じ。どこかに違和感がある。新BGMとの不釣り合いかもしれません。でも意外に久しぶりの「いつもの」に安心したところで、突き落とされる。
  • 玩具のような音を立てて転がるロッド。力がまるで敵わないだけでなく、新たな敵がお約束を拒否します。
  • それが何なのか知らないダイモーンにぞんざいに噛まれ、輝きを失う銀水晶。ここもBGMが衝撃です。今までがすべて崩れ去るような悲惨な響き。
  • 最初に触れましたが、変身が解かれる。ちゃんと私服に戻る。視聴者は今までセーラームーンと一緒にヒロインごっこの夢を見ていたはずなのに、その姿で夢から引き戻されます。
  • 転がり落ちるブローチ。幻の銀水晶すらマンネリの象徴にされます。セーラームーンを敗北させます。手も足も出ない惨敗で。
  • 出てくるときは余裕だったタキシード仮面も「うさこ!」と、こちらもヒーローごっこをやめてしまいます。
  • 猫2匹も葬り、「邪魔者はこれで全部か……!」と、何かに焦っているようなミクージ。今までの敵に無い容赦のなさを感じさせます。
  • ピュアな心の結晶。一見美しくきらびやかなようで、硬く刺々しい殻。これが胸から、地肌を狙い撃ちされて出てくるビジュアル。澄んでいながら儚い音が、大切なものが消えゆくような焦燥を煽ります。今までのエナジー吸われてダウンするのとはまったく違います。
  • ぐったりうなだれるレイから結晶が離れる。どう見てもこれを奪われたら。バックに流れるさっきのレイの言葉。まさか。
  • BGMも流さない。もうヒロインごっこの夢はとっくに終わっています。さっきまでヒロインだったうさぎに、「返して! それをレイちゃんに返してよ! 許さないから……!!」と命乞いするしかなくさせます。
  • 超人プロレスまんがでいうと「あーっと これはもう試合ではありません」という状態。今まではなんだかんだ言って試合というか決闘だったんです。そんなロマンはどこにもない。ただ少女が侵され、泣き叫んでます。惨劇です。この番組で初めて引きました。
  • これがどっかの異世界ではなくて、火川神社の敷地の満開の桜と青空のもとで行われている。日常を破壊される悲惨さが際立ちます。
  • 新キャラが新敵を圧倒。「主人公と無関係のハンター」というパターン。今までの長くつらく悩み苦しみ成長させられた闘いが児戯に見えてくる。
  • 全体が緊張しています。なので視聴後の緊張からの解放が劇的です。解放といってもたまたま助かっただけ(助けられたのですらない)なので、敗北感と喪失感だけが残ります。抜け殻のようになる視聴者の心。
  • 化学者がダイモーンを放ったのは初めてのようですが、謎の戦士は手慣れた感じ。セーラームーンたちが地球と未来をかけて戦っている間、ルナも知らない戦士が戦っていて、そしてそれがいままでよりはるかに高いレベルのものだったという事実。
  • なにもわからないままレイが助かって、いつものテンションで喜ぶうさぎ。「あのさ、食べたいものある?」「ふふ、もう泣かないの」でどれほど救われることか。
  • しかしラストは「……また、新しい戦いが始まるの……」というつぶやきに、据わった目。新BGMが紡ぐ深刻な緊迫感。先ほど刻み付けられた敗北感の中でです。ほんとにセーラームーンかこれは? さっきっから感動しっぱなしですよ。
  • ていうか、このテンションの話を前回の総集編であのノリでお伝えしてたのか……。そこまで考えたら、前回の感じ方も変わります。
  • 改題しても変わらないエンディング。さっきの変身同様、本編のノリとミスマッチな気もするし、放心してるし、耳に入ってきません。なんで変えなかったのか、次回以降もこのままなのか。
  • セーラームーンも3シリーズ目ですから、「新しいことはやった時点で新しくなくなる(海江田春樹)」。そんなもの余裕で吹き飛ばすその力に、ただ圧倒されるばかりです。ええ、圧倒されたとも。

以下、それ以外の感想です。

  • イントロが違う。主題歌変えたのか!?と思わせておいて、歌う人とサビの節回しとアレンジが変わった。なんか懐かしい歌い方だと思って、字幕を見たら納得。
  • 4人は制服姿が少しありますが、うさぎはなし。無印とRは、制服のうさぎとセーラームーンとの対比を描いていました。成長したうさぎに子供を想起させるイメージはいらないってこと?
  • サブタイトルの曲も変更。なんかこう、魔女っ娘っぽいノリがなくなりました。ハートが押し出されてます。トランプのハートは聖杯の図案化だとも言われているそうなので、そういう意味?
  • プロローグのレイちゃんの夢、「んごごごご」とかおどろおどろしい音で始まったと思ったら、これうさぎのいびきじゃないのw
  • うさぎを元に戻すレイちゃん。音がすごいw ていうかレイちゃん優しい。
  • 私服は5人ともおニュー。進級祝い♪
  • 「あたし達3年生になったのよ」。なんとなく、アニメ回の「来年は中学3年生よ」にトーンが似てます。
  • 「後悔さっきのたらこ」。この辺は従来通り。
  • ナース回で美奈子ちゃんが爆破したレイちゃんのラジカセが新しくなってます。
  • 化学者の声。すみません、どうしてもキン肉マンにしか聞こえん。衛の声も最初ちょっと違和感があったのですが、それとも違う。今までの伝説の世界の人たちとは違う、普通の化学者なんだという印象を受けます。(ところがこれ、Sを最後まで見ると印象がまったく変わるのでした。この人じゃなきゃダメだったんだと)
  • 実力テストが5点。第1話で30点でしたから、勉強しないでセーラームーンやってるとこうなる。春奈先生、2年分を吐き出す心の肉筆。
  • 答案の英文は訳すと面白いです。
  • 海野が絵だけ出演してます。なるちゃんは絵もないのが……。
  • 悩んで歩くうさぎの背景ほかに、宇田川ビルとかNaYaMe Satoとか佐藤順○著『悩んでもしょうがない』とか佐藤事務所とかいろいろあります。
  • ところどころに出てくるきんぎょ注意報っぽい絵。作画スタッフは今までと同じで安心。
  • まもうさ。実は第77話で仲直りしてからも、二人のいちゃこらはまったく描かれておらず、こういうのは第61話以来ということに。つまり二人のこういう姿って今までほとんど目にしてこなかったわけです。意外。
  • 6頭身のうさぎ。やっぱり普段はこのくらいがいいです。そしてこの顔。同じ作画監督の第16話の「あんあんあんあんあん」と同じ顔。頭空っぽそうなのが大好き。
  • 自分ちのおみくじを引くレイちゃん。こういうのもすごい好き。
  • CM入りと明けは、ハートが舞ったり舞わなかったり微妙に違うけどだいたい同じ。うさぎが流し目なんか覚えてずいぶん大人になってます。
  • お勉強が嫌で引き返そうとするうさぎに「こらーうさぎ!」久々のルナのうさぎ呼び捨て。うさぎが話を聞かなかったり使命を放棄したりすると出てきます。さらに第4話シェイプリン以来の爪で脅迫。この辺りはむしろ新鮮な部類。
  • そこから約半分まったく笑いなし。斜めに割った緊迫のラストカットとショッキングな新BGM。あの気楽だったセーラームーンは遠くなってしまったんだ――1回目に見たときはほんとにそう思ったんですよ。
  • だがしかしこのカット、「タキシード仮面だけコスプレしたまま」という一点が気になったが最後笑いが止まらなくなります。さすがセーラームーン、見れば見た分だけ何かが見つかります。神回です。